安倍の戦争政治を断ち切ろう

5月23日に行われた『時代を斬る~改憲阻止の論理』での鈴木たつおの提起をダイジェストで掲載します。

001

【1】憲法とは

1 「政治の子」「革命の子」

「日本国憲法は人類普遍の理念の結晶」という説がありましたが、「憲法とは政治の子」ととらえる方が適切と私は考えます。「革命の子」ともいえる。

憲法とは権力を獲得した者の勝利宣言であり、その支配の形式と被支配者との関係(権利義務)に基本を決めている。

新興ブルジョワ階級によるフランス革命、その4年後の1793年に制定されたフランス憲法は、労働者の団結や権利を敵視した。その後、イギリスのチャーチスト運動(1838~)や、プロレタリアートが独自に初めて登場したフランスの「48年6月蜂起」といった過程を経て、労働者の権利が勝ち取られてゆく。

ロシア社会主義連邦ソヴェト共和国憲法(1918)では、「人間の人間によるあらゆる搾取の廃止、階級への社会の分裂の完全な廃絶、搾取者に対する容赦ない抑圧、社会主義的な社会組織の確立、あらゆる国における社会主義の勝利」を宣言した。勝利した労働者階級の全世界に向けたメッセージ。

2 日本国憲法の成立と性格

日本国憲法の基本的性格はブルジョア憲法です。29条1項「財産権はこれを侵してはならない」が示す通りです。

しかし、アメリカとの強盗戦争に完全敗北し、他方では「戦後革命」と呼ばれる日本とアジアの人民の決起情勢に迎え撃たれて、支配階級にしてみれば不本意ではあるが「妥協」を強いられた。そういう点では現行憲法は特異な存在であり、こうした「政治」との関係で見たとき、「改憲」ということの本当の意味が浮かび上がると思います。

憲法が国会で成立するが46年11月3日、明治憲法下の最後の帝国議会で決めたというかたちをとっている。施行が翌年47年の5月3日。47年と言えば2・1ゼネストです。このゼネスト情勢に押され、あるいはそれをつぶすために、支配階級は「妥協」せざるを得なかった。だから、彼らは56年の鳩山内閣以来執拗に改憲を狙ってきた。そして中曽根内閣。「国労を解体し、社会党・総評ブロックを消滅させ、新しい憲法を床の間に」と言い放った。戦後ずっと改憲策動が挫折してきたことを、中曽根はこういう形で総括した。「結局、労働組合・労働運動をつぶさないと改憲はできない」。そこから今に続く改憲の動きが始まる。

【2】第9条解釈をめぐる攻防

1 第9条をめぐる吉田茂答弁と「砂川判決」

さきほど触れた、1946年の最後の帝国議会。ここで、吉田茂首相は第9条の解釈をめぐり、「近年の戦争の多くは国家防衛権の名に於て行はれたること、顕著なる事実。故に正当防衛権を認むることが偶々戦争を誘発する所以である」と答弁した。つまり、自衛戦争や国家防衛権を全面否定している。

ところで、砂川判決が、先日の「安保法制懇」報告書のトップに、「特筆すべき」と出てくる。第一審「伊達判決」ではアメリカ駐留軍は「『戦力の保持』を禁止する9条2項に反し違憲」した。高裁を経ずに「飛躍上告」し最高裁が逆転「合憲」としたが、この判決文で「わが国固有の自衛権」と言及した。吉田茂答弁「自衛戦争・自衛権否定」の変更だから、安倍らにとっては「特筆すべき」ということなのだろう。(しかし「集団的自衛権」にはまったく触れていないことは、しっかり確認しておく必要はある)。

ところが、この砂川判決には、もっともっと重大なことがある。

最高裁長官(田中耕太郎)が、駐日アメリカ大使や公使と再三密談を交わし、「大法廷判決は全員一致の合憲」を約束していた。この事実が、アメリカの公文書により、近時次々と暴露されている。

さらに、「国家の行為で高度に政治性を有する統治行為または政治行為については、裁判所の審査権が排除もしく自制される」という、憲法と司法の自殺宣言と言うべき「統治行為論」が、ここではじめて登場している。憲法81条でいう「違憲立法審査権」の放棄にほかならない。

2 改憲阻止の論理

われわれが訴えるべき改憲阻止の論理は、国家とは大資本と大企業による人民支配の道具であり、戦争とは、「1%」の利益と延命、つまり強盗どうしの資源・市場・勢力圏のぶんどり合いのために、「99%」が殺し合いに動員されるものということ。それが、常に「自衛」の名で行われるということ。

だから、国際連帯、「労働者人民に国境はない」。国家主義・排外主義との闘いが重大だ。安保法制懇も安倍も、「国家が国民を守る」と繰り返す。だが、国家が国民を守ったことが一度でもあったか。「天皇制と資本主義の国体護持」のため、東京大空襲→沖縄地上戦→ヒロシマ・ナガサキと対米戦は引き延ばされた。「軍隊は決して民衆を守らない」という沖縄戦の教訓だった。
0002

【3】安保法制懇

 1 「安全保障環境の大きな変化」

去る5月15日、安保法制懇報告と政府の「基本的方向性が出された。安倍や官房長官は盛んに「安全保障環境の大きな変化」といっている。

これまでは「安全保障環境の悪化」と言っていました。都知事選の中で、「対立をあおり、戦争状況を作ってのは安倍政権そのものではないか。『悪化』だなどと人ごとのようなことをいうな」と弾劾していたら、最近「大きな変化」と言い出した。

「戦争は別の手段による政治の継続である」という有名なクラウゼヴィッツ『戦争論』の言葉がありる。人生観が変わるくらいに影響を受けた本ですが。

現在生起していることのすべてが、政治の延長だ。だから、その政治そのものを問わなくてはならない。5月15日の安倍の記者会見は、ちょうど中国とベトナムの南中国海における衝突の最中だった。オバマ大統領のアジア歴訪で、フィリピンのスービックとクラークのふたつの基地を再び手にした。ベトナムとアメリカは、軍事的・経済的に急接近している。また安倍とオバマは、沖縄・辺野古新基地建設を確約した。

他方、中国は「A2・D2戦略(領域に近寄せない、アクセス拒否)」で対抗し、習政権は、年間20万件といわれる人民の暴動と少数民族問題の噴出という国内支配の危機を大国主義的軍事政策で乗り切ろうとしている。

この情勢で、「アジアで最も危険な人物」(欧米マスコミ)安倍の対中国包囲の軍事外交が突出して展開されている。それは、戦後保守政治とは「異次元」ともいえるアメリカ対抗性をもむき出しにしているが、世界大恐慌と「3.11」から脱するために、日本の支配階級は、この「危険な安倍」をあえて選択した。

2 地球の裏側まで 「自国民保護」

海外旅行者の数まで持ちだして、安倍は「在外自国民の保護・救出」を情緒的に訴える。そして、「これは『「武力の行使」にあたらず、憲法上の制約はない」と安保法制懇は言い放つ。だが、この「在留邦人の保護」こそ、侵略軍隊を送り込むために何百回・何千回も使われてきた常套句である。そもそも「国家が国民を守ったことがあるか」という歴史的事実を突きつけ、この虚言と対決する必要がある。

また、安保法制懇は、「わが国と密接な関係にある外国に対して武力攻撃が行われ、その事態が我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき」は、集団的自衛権が行使できるという。「密接な関係」「影響を及ぼす可能性」だから、まさに“地球の裏側までも”であり、また、「アメリカの戦争に巻き込まれる」ことにまったくとどまることなく、「日本が主体となる戦争」が公然と想定されている。

3 「憲法の規定の文理解釈として導き出されるもの」

安保法制懇の最後に、重要視点は、「この報告書は、憲法の規定の文理解釈としてすべて導き出される」といっていること。つまり、明文改憲という「壁」は彼らにはもはや不要だ。安保法制懇のこの報告書じたいが、現行憲法と何ら矛盾・抵触することのない「新たな憲法」と言い切っているのだ。戦後最大級の改憲攻撃である。

4 結び

最後に、強調したいことを2つ。

一つは、改憲阻止には、労働運動の復権が決定的であること。先に挙げた中曽根発言はそのことを裏側から示している。

二つは、国際連帯。それぞれの国の人民が、手を結んで、「自国の防衛」などという国家主義・排外主義を蹴飛ばし、自国政府の戦争政策に真正面から対決し、戦争遂行政府を倒す。それを、日本・中国・朝鮮はもとより、ベトナムやフィリピン人民にも強く呼びかけ実践すること。

私たちは、今年の「敗戦の日」には、8月17日(日)日比谷公会堂で、「戦争・原発・首切りの安倍をともに倒そう」全国集会を開催します。戦後史の転換点です。ぜひご参加ください。