第9回「時代を斬る」 での提起『改憲と戦争―安保関連法案を分析する』

第9回「時代を斬る」
『改憲と戦争―安保関連法案を分析する』

【1】労働者人民の怒りの高まり

沖縄3万5千人の「屈しない」

安倍は、決して、順風満帆で好き勝手なことやっているというのではない。むしろ人民が、今までの枠を越えた激しい怒りで追い詰めている、そういう感じがします。

5月17日の沖縄県民集会。那覇空港の近くの球場での集会が3万5千人。5月19日に霞ヶ関の弁護士会館の講堂で開かれた集会で、私は主催者あいさつで触れたのですが、「屈しない」というプラカードの言葉、「反対」ではなくて「屈しない」というところに、沖縄の闘いの新しい次元を感じました。安倍と菅がやっている、問答無用の、力ずくの国家暴力で、沖縄の民意を踏みにじる、そういう政治に対して、絶対に屈服しない決意をたたきつけた。この集会に参加した学生は、会場はあふれ、実際には4万5千人は集まっていたと話していました。また、民主労総のゼネスト集会を彷彿とさせた。4月24日の韓国ゼネストがたちまちにこうして波及している。

橋下が打倒された

同じく5月17日、大阪の橋下がついに打倒された。夜中までテレビを見ていたという人が多い。大阪都構想への反対論には様々なものがあったと思いますが、根本的なところでは、大阪市を解体するということで、市職労働者3万5千人の全員解雇、公務員ですから分限免職、そして選別して再雇用していくというのを狙った。国鉄分割・民営化と同様。やれ国鉄が赤字だとか、余剰人員だとか、結局本当の狙いは国労つぶしだった。当時の中曽根首相が、「国労をつぶして総評を解体し、もって憲法改正やるつもりだった」と公言している。労働者の団結をつぶす。橋下は、不当労働行為の限りを尽くしていた。それが職場からの反撃にあい、労働委員会でも大阪地裁でも負けた。例えば、組合活動に関するアンケート。労働組合活動に参加したことありますか。誰に誘われて。具体的に名前まで書け。そういう労働者の団結を破壊することでのしあがった彼がついに打倒された。

なお、上でも触れた5月19日の弁護士会館集会での挨拶の中で、この橋下とヒットラーに関連して「カップ一揆」と言いましたが、正しくは「ミュンヘン一揆」です。訂正します。その一揆の敗北からヒットラーが立ち直り、ファシストとして純化して再び登場してくる。この歴史を見れば、橋下の動向には依然として要注意と思います。

5月3日の改憲反対横浜集会

人民の怒りの高まりという点でもう一つ、5月3日横浜の3万人の改憲反対集会です。集会を呼びかけた大江さんが、安倍を最初から呼び捨てにする。ノーベル賞作家で、言葉をものすごく厳密に使う人が、あえて「アベ」と言う。80歳の彼が「これが私がこういうみんなの前で演説する最後になるでしょう」という中での発言です。アベの戦争政治への怒りをひしひしと感じました。

同時に、アベが振り回す詭弁とごまかしに対する侮蔑。私も弁護士会館集会では、その大江さんに連帯と敬意をこめて、終始アベを呼び捨てにしました。今日もそれでやります。

もっとも、この横浜集会での各政党発はちょっと酷かった。生活の党などは「我が党は日本国家の自衛権は認める立場です」などと言う。他の政党も、戦争法案の解釈を述べ立てるだけで、本当に今この安倍をどうするのかということに対しては誰も語らない。適当なおしゃべりでごまかしている。特に、この「自衛」の問題は、後に述べますが、核心です。

【2】戦争法案をめぐって

安倍の本性が日々露呈している

本題に入ります。戦争法案、5月14日に閣議決定し、翌日国会に上程されました。10本の既存法の改悪をみなタイトルを変え、「平和」を付けてごまかした。もう1本が「国際平和支援法」という新法。これは恒久法と言われ、一回一回国会の議決なしで自衛隊を後方支援で派兵できるというもの。これらを一括採決するつもりです。

ところが、早くも本日5月22日の段階で安倍政権の本性が露呈している。

まず、この国会上程にあたっての記者会見で、安倍は「アメリカの戦争に巻き込まれることは絶対にあり得ない」、「60年安保の時もそう言われたけど、そんなことはなかった」と言い切った。しかし、これには二重の詭弁がある。「アメリカの戦争に絶対に巻き込まれることはない」というのは彼に言わせると、アメリカの戦争じゃないんだと、日本を守るための戦争なんだと。だから巻き込まれるなんてことは絶対にないという。こういうところの言葉の使い方のずる賢さは無類です。

「60年安保以来・・・」。これもゴマカシ。60年安保改定によって、その後ベトナム戦争への参戦、沖縄からB52が飛び立って毎日何十万という人たちを殺した。そして、湾岸戦争、カンボジアPKO、アフガン戦争給油、イラク派兵という歴史的事実。

また、社民党の福島瑞穂さんの「戦争法案」という国会発言の議事録削除問題。年配の方は戦前の斎藤隆夫議員の国会演説を思い出したかもしれません。1940年、「聖戦の美名に隠れて・・・」と中国侵略戦争を批判した。聖戦というのは天皇の戦争という意味。そこを捉えて、あるまじき発言だとされ直後に議院を除名された。

もう一つ、ポツダム宣言問題。5月20日の志位共産党委員長との党首討論で、「ポツダム宣言は日本の戦争は間違っていたと宣言している」との質問に、安倍は「つまびらかに読んでいないので直ちに論評できない」と答えた。これに志位委員長は「本当に読んでいないようだ、事実誤認がある」と皮肉っぽく記者会見で言っているが、そんな問題ではない。安倍政治の核である「戦後レジームの脱却」の戦後レジームの出発点がポツダム宣言であることは議論の余地はない。「つまびらかに読んだ」うえで、それとの決別を言っている。読んでいないから論評できないなんてゴマカシを絶対に許してはいけない。結局は、「戦後70年談話」に向かって、内外から厳しく問われている安倍政治の本性が暴露されることを怖れて逃げ回っている。彼はしきりに「東京裁判史観」と言う。東京裁判は戦勝国の一方的な裁きだと。しかし、東京裁判とはポツダム宣言の価値観を反映したもの。安倍がここでも追いつめられている。

「7・1閣議決定が基本方針」

具体的な法案の検討に入りましょう。中心に座っているのは、去年の7.1集団的自衛権容認の閣議決定、「憲法9条のもとで許される自衛の措置」です。

国会に上程されている11本の戦争法案について、「7.1閣議決定が基本方針」ということは、今回の自民党・公明党の合意文書に明記されている。中心軸はここだと捉えると、法案全体を見晴らすことができる。なんとか事態、なんとか事態と、わざと人を惑わす言葉を振り回している。私の友人が鋭い指摘をしていました。日中戦争を「満州事変」「日支事変」と言い変えたように、ごまかしだと。

①武力攻撃事態法

あえていえば「武力攻撃事態法」が中心です。「存立危機事態」という概念を据えた。「存立危機事態」というのは、7・1閣議決定で言う「新3要件」。歯止めどころでなく、自衛隊が世界規模で戦争行為をすることを「自衛の措置」として正当化する根拠となっています。「我が国と密接な関係にある他国」が武力攻撃され「我が国の存立が脅かされる」場合、それを排除するために必要な自衛隊の武力の行使を認める法律です。

「密接な関係にある他国」ですから、アメリカに限らない。それが武力攻撃された場合、我が国の存立が脅かされると、ときの内閣が認めればいい。ホルムズ海峡の機雷封鎖を例に挙げ、さらに一昨日20日の国会では、電力不足もそれに該当するんだと出した。石油が入ってこない、火力発電所が十分に動かない、そうすると日本の経済は危機に瀕し、日本国家は存立危機事態に至ると。この理屈は、他の戦争法案にも使われ、自衛隊の武力行使ができる根拠になっています。

②重要影響事態法案

これは今までの「周辺事態法」から「周辺事態」という地理的概念を取っ払ったものです。「そのまま放置すれば我が国に対する武力攻撃に至るおそれのある事態」。これだって、どうにでも解釈できる。「至るおそれ」などということほど無限定なものはない。内閣がそれを決めるのですから。
そういう事態に対して「日米安保の効果的運用(これは米軍後方支援です)を中核とする外国との連携」、アメリカに限らない。オーストラリアだとか言ってますけど、韓国とか、インドとか、どことでも連携可能。「存立危機事態」そして「重要影響事態」と、「切れ目なく」連結するわけです。

③国際平和協力法案

新設の恒久法と呼ばれている。これは「諸外国」の軍隊等に対する協力支援、「物品・役務の提供」、「物品」ですから、武器弾薬は当然含まれる。

また、「現に戦闘中の現場では実施しない」と言っているけど、「現に戦闘中」ですから、直前まで、また直後に戦闘が再開されても構わない。

この恒久法だけ、国会の事前承認が原則とされた。公明党をたらし込むためですが、7日間で議決しろという努力義務が入っている。そして、首相官邸の「高官」(官房長官?)は、「この事前承認制度は、全体として見ればたいした問題ではない」と、すかさず言明しています。

④PKO協力法改正案

これは今までやってはならないとされてきた「駆けつけ警護」、つまり他国のPKO部隊が攻撃されたら、そこに駆けつけて戦闘する。その場合、国連が関与しない地域でも許される。さらに武器使用が徹底的に緩和され、「任務遂行のための武器使用」、だから対戦車砲や地対空ロケット砲でも使用できる。

⑤自衛隊法改正案

「存立危機事態」で防衛出動。防衛出動ができる範囲を際限なく広げた。また、「在外邦人の警護・救出」。日本の軍隊が海外出兵する場合、最大の名目は邦人保護だった。その他、「捕虜取扱法」などです。

11法案のうち、新法が「国際平和協力法案」。改正法案が、「武力攻撃事態法」「周辺事態法」「PKO協力法」「自衛隊法」「船舶検査法」(臨検)、「米軍行動円滑化法」「海上輸送規制法」「捕虜取扱法」「特定公共施設利用法」「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」。それらの骨格は、以上に述べたところだと思います。

【3】核心的争点は

「国家の存立」「自衛の措置」

安倍の詭弁・トリックの中心が、昨年7.1閣議決定のキーワードでもあった「憲法9条のもとで許される、自衛の措置としての武力行使」です。これに真っ向から対決し、打ち破ることが最も重要だと考えます。

今日の戦争は、常に「自衛のため」と称して行われる。ホルムズ海峡問題でも、電力不足でも「国家存立の危機に対する自衛」と言われる。憲法9条の制定過程で有名な論争があった。憲法9条は自衛戦争まで否定しているのかという質問を共産党の野坂参三がする。自衛戦争は否定してはならないのではと。それに対して、なんとあの吉田茂首相(当時)が、「近代の一切の戦争は自衛の名によって行われた」と答弁した。それが朝鮮戦争を経て、法的には1959年の「砂川事件最高裁判決」でひっくり返えされた。有名な東京地裁・伊達判決(アメリカ駐留軍違憲)に対する飛躍上告審で、最高裁は「我が国が持つ固有の自衛権は否定されない」と言った。

先日、集団的自衛権をめぐる自民党・公明党の密室協議で高村副総裁がしきりにこの判決を持ち出そうとしていました。ところがこの最高裁判決は、田中耕太郎最高裁長官が、アメリカの駐日大使・公使と密談を重ね、「伊達判決は絶対に最高裁で満場一致で逆転してみせる」と約束して出されたトンデモナイ代物です。

人民にとって戦争をめぐる核心は、「固有の自衛権」などという「権利」の問題ではない。その戦争に至る政治と、戦争の本質的性格こそが問題です。あのアジア・太平洋戦争すら、「自存自衛」と称された。「自衛」と言わない戦争はない、「これから侵略戦争を始めます」などという支配者は古今東西いません。

資源・市場・勢力圏の取り合い 強盗どうしの戦争

共産党のビラには「日本が攻撃されていなくても、集団的自衛権を発動し、自衛隊が海外での武力行使に乗り出す」と書かれています。

「日本が攻撃されていなくても」…ここが大問題です。攻撃されたらどうするか、「自衛」として戦争をやるってこと。

だからここで、戦争は、政治の延長であり、常に自衛の名によって行われるだということをきっちり押さえることが最も大事です。尖閣列島問題でも、日中国交回復の際、田中角栄―周恩来会談で、次の世代に任せましょうと、いわば棚上げになった。それを石原元知事が東京都が買い取るうと言いだし、野田内閣が国有化宣言してしまった。「棚上げ」は吹っ飛んで、中国としても国内危機事情もあり、一気に戦争的な事態まで進んだ。

このように、戦争は政治の延長であり、戦争の性格をきちんと見極めなければならない。今日の戦争の性格は、強盗同士の資源・市場・勢力圏のぶんどり合い、三菱とかJRとか日立とか東芝とか、1%の大資本家と大銀行の利益のために、99%の人民が戦場に送られて殺し殺される。だから、共産党の「日本が攻撃されていなくても…」という言い方は、この最も重要な核心を避けている。アメリカの戦争だからよくないと言っている。そこに安倍は突っ込んできている。「絶対にアメリカの戦争に巻き込まれることはありません」などと。

労働運動の再建を

どうしたら戦争を阻止できるか。やはり、この社会を実際に回している労働者の決起だと考えます。あの中曽根発言そのことを裏側から端的に示しています。国鉄分割・民営化の目的は、「国労をつぶし総評を解体する、もって新しい立派な憲法を床の間に飾る」と言った。カギは労働運動にあることを支配者の側から認めた。

動労千葉、動労水戸を先頭に労働運動の再建が急速に進んでいます。これに対抗して、最近、名うての右翼評論家・櫻井よしこは、産経新聞に「連合を分裂させろ」と投稿した日教組や自治労の中央本部は連合の方針に従っているようだけれども、しかし、地方に行ったら、改憲反対の集会などで日教組とか自治労の旗が一番目立つ。だから連合を分裂させて、日教組とか自治労を追い出せと。「産業報国会」をつくれというのです。

1940年、あの「真珠湾」の前年、「黙って働き、笑って納税」っていう標語があったそうです。「贅沢は敵だ」という有名なスローガン、あれと並んで掲げられた。その「敵」の前に「素」を入れた落書き、「贅沢は素敵だ」という人民の抵抗はありましたが。

この櫻井よしこや、分割・民営化で20万人の国鉄労働者の首を切ったJRの葛西敬之らが先頭に立って、「美しい日本の憲法をつくる」1000万署名を始めました。いま、どの世論調査でも、特に憲法9条に関しては賛成がますます減っていますよ。それを下からひっくり返えそうと。

労働運動の再建と全世界人民の連帯。戦争をやろうとする、それぞれ自分の国の政府を倒す。韓国では、労働基本権の保障・非正規職撤廃、そしてセウォル号306人の命の責任を取れ、とパククネ打倒のゼネストが闘われています。

沖縄では、安倍政権の問答無用の辺野古基地建設強行に「屈しない」3万5000人の大集会から、島ぐるみゼネストへと情勢が進んでいます。

韓国、沖縄そして本土で、動労水戸、動労千葉を先頭としてゼネストをやる、その労働者人民の団結の力をもって、安倍戦争政治を断ち切る。

目前に迫った戦争法案粉砕の闘いに結集しましょう!

6月7日(日) 労働者集会(日比谷公会堂 12:30)
6月28日(日) 韓国民主労総ゼネスト連帯集会(江戸川区総合文化センター 13:30)
7月5日(日) 閣議決定一周年・安倍打倒集会(ニッショーホール 13:00)